入江明日香さんの魅力

レビュー

こんにちは。先日、恩田陸さんの小説「7月に流れる花」「8月は冷たい城」のジャケットの絵を描いたのは、入江明日香さんであるという記事を投稿しました。そこで紹介した画集が先日自宅に届きました。とってもいい作品集でしたので、皆さんに紹介したく今回は投稿させていただきます。作品の感想は個人の感想です。皆さんとは違う意見かもしれません。よろしくお願いします。

入江明日香(いりえあすか)とは

入江明日香さん近影:(https://www.kanaloco.jp/article/entry-35804.html

入江明日香さんは日本の美術家です。

「銅板を媒体とした版表現の多様性を追求していきたいと思っています。」と自身の方向性について話すとおり、銅板に淡く繊細な線を描いていくのが特徴。

1980年生まれ。

多摩美術大学博士前期課程美術研究科版画領域修了。

代表作

杜若(かきつばた)

入江明日香作:杜若
杜若(かきつばた)

入江明日香さんの公式ホームページのトップになっている代表作。

入江明日香作品集「風のゆくえ 生命の真影」の表紙にもなる。

この絵をひと目みて、立ち止まらない者はいないのではないかと思われるほど吸い込まれる魅力をもった作品。

冬鶏頭

鶏頭とは一年生植物であり、赤く美しい花を咲かせるのが特徴。

その鶏頭とネコ化(黒ヒョウ?)が一体となり、神々しい姿を見せる。

「風のゆくえ 生命の真影」では裏表紙となっている。

動物と植物が一体化する入江明日香の代表的な1枚。

銅版画とは

入江明日香さんが用いる手法。

銅板に傷をいれてそこにインクを塗り、傷口にだけインクを染み込ませ、表面は拭き取る。

金属の傷だけあって、極細の線を引くことができ、ペンや筆では描けないような緻密な絵を表現することができる

入江明日香公式ホームページ:https://irieasuka.wixsite.com/officialwebsite

入江明日香作品集紹介「風のゆくえ生命の真影」

入江明日香画集作品

彼女の初期作品から最新作まで75点を掲載しています。代表作は「醍醐枝垂桜」という作品で、158×516㎝の六曲屏風に描かれています。

左から男の子でしょうか?洋服を着ていますが、なんだか和も感じられる服を着ています。その服にはたくさんの鳥が描かれており、どれも、可憐でじっとこちらの様子を見ている、そんな風に見えます。

その男の子の下には江戸を思わせる男性でしょうか?子供をおんぶしながら、上を見上げています。男の子とは逆の方向を見上げているので、その先に何があるんだろうと考えてしまいます…。

その男の子の先へ目線を移すと、江戸の活気を感じさせる風景が。その上には雲が浮かんでおり、その雲に繋がるように女の子の顔が描かれています。

少し微笑んでいるように見える女の子は、じっとこちらの世界を見ているようで、見ているうちにどこか悲しげな表情にも見えてきます。

女の子の周りにはたくさんの蝶が。なんだか儚く見えます…。

この女の子の顔をじっと見ているうちに気づきますが、よく見ると女の子の右下あたりに狼のような動物が隠れるように描かれており、入江さんの作品を見ていると、こういった隠れた動物が多く描かれている印象です。

さらに横へ目を移すと、女の子でしょうか男の子でしょうか?どちらともとれる子が描かれており、頭には可憐な花。顔から下は江戸の人や動物が。こうして、見ているうちになんだか時間も忘れて行きそうです…。

このように、入江さんの作品には「江戸」と「現代」を組み合わせたような作品が多くあるようです。

男の子の服には可憐な鳥。下には江戸の人が描かれている。女の子はどこか悲しそう
左の子の顔から下には江戸の風景と動物が隠れるように描かれており、江戸の風景に人が溶け込んでいる

また、「孤高の狼」という作品はその名の通り、狼を描いた作品です。

画集を見ていると分かりますが、ほとんどは人間の子供や若者を描いて隠れるように、江戸の風景や動物が描かれており、この絵はまず狼という動物が大きく描かれている点が、他の作品とは違うことがわかります。

ですが、ただ狼を描いているのではなく、他の動物が狼に隠れるように描かれています。

狼の体には梅の木でしょうか?まるで狼と絡み合うように描かれており、そこには雀が4羽。体を休めています。

そして、狼の左足にはネズミでしょうか?上半身だけひょっこり出してこちらの様子を伺うように見ているよう。

狼の表情は、なんだかたくましく見える一方で、目は不安そうに見えます。

たくましい狼に守られて雀も安心して体を休めます
「黒い森」2017年の作品。ミクストメディア
「白鷺」2017年の作品。ミクストメディア
「藤」2017年の作品。ミクストメディア
「雀の貴婦人」2018年の作品。ミクストメディア
「麟鳳」2011年の作品。ミクストメディア 他の作品と比べて黒を多く使っている印象。
「一夜草」2010年の作品。油彩
「首都高を駆ける」2017年作品。ミクストメディア

作品の題名に注目をしてみると、絵に描かれている少年少女を題にしがちだと思ったのですが、それを取り囲む動物や植物を題名にしているのがわかります。

それも、入江さんの作品の魅力ではないかと思います。

ミクストメディアという技法について

入江さんの作品は「ミクストメディア」という技法を使って作品が作成されているようです。この技法については、画集の最後に本人が語っているページがあります。

和紙に刷った銅版画をコラージュ(糊付け)して、水彩絵具などで着色する技法のようでうす。これは独自の手法のようです。

画集では「作品ができるまで」を簡単に紹介しているページがあります。ぜひ見てみてください。

アトリエについて

入江さんは若手作家に制作の場を提供するアトリエ村「丸沼芸術の森」の一棟に入って作品をつくているようです。少しそのアトリエについて調べてみることにしました。

場所:埼玉県朝霞市上内間木493-1

所属している芸術家(敬称略):青木美歌(ガラス作品)榎本洋二(陶芸)川部倫子(ガラス)バージニア・クリセヴィシュート(彫刻、セラミックアート)河明求(陶芸)丸山栄子(彫刻)渡辺一宏(彫刻)大橋博(彫刻)儀保克幸(彫刻)長尾望(現代美術)ハラダチエ(絵画)山本靖久(絵画)

常設展はなく、訪れる際には事前に問い合わせが必要のとの事。

丸沼芸術の森のHP↓

http://marunuma-artpark.co.jp

以上、入江明日香さんの作品に魅了された人間の投稿でした。ありがとうございました。

レビュー

Posted by sensiki