『ネタバレ注意』劇場版響けユーフォニアム~誓いのフィナーレ~ 感想・考察

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この先、「劇場版 響けユーフォニアム ~誓いのフィナーレ~」・「リズと青い鳥」の内容についてのネタバレがあります。
未視聴の方は本記事を読まないことを推奨いたします。

『ネタバレ注意』劇場版響けユーフォニアム~誓いのフィナーレ~ 感想・考察

誓いのフィナーレロゴ

ついに「誓いのフィナーレ」が公開されました。

仕事帰りに車を走らせ映画館へ行きました。公開日初日のレイトショーでのことです。

前作の「リズと青い鳥」を見てから、もう一年経ちました。TVシリーズ1、2と見てきて、感動の2のフィナーレから、黄前久美子ちゃんの成長した姿を本作ではちゃんと確認することができて、それだけで感動できるのは長編物の良さでしょうか。

「リズと青い鳥」はあくまで「希美とみぞれ」の物語であり、黄前久美子ちゃんはちょい出しの脇役に徹しています。でてきたとしても数分の出演だけです。

その「リズと青い鳥」ですが、今作はそれを見なくても楽しめるように作られていました。

なんと今作では「希美とみぞれ」は一言も喋りません!!

リズと青い鳥の続きを期待した人はちょっとガッカリしちゃうかもしれませんね。

ただ思い切ったことをしてくるなぁと感心しましたが、それは必然だったように思います。

完全に黄前久美子の物語を描くうえで、そういった別キャラクターのことを描いてる暇はないくらい詰め込みすぎと言うくらい詰め込んでありました。

「響けユーフォニアム~誓いのフィナーレ~」とは

概要

響けユーフォニアム~誓いのフィナーレ~は京都アニメーション制作の劇場用アニメーションである。

公開日は2019年4月19日。

「響けユーフォニアム」のアニメシリーズで、時系列的には「TVアニメ響けユーフォニアム」「TVアニメ響けユーフォニアム2」の続編にあたる。同時期の出来事を別視点で描く「リズと青い鳥」は2018年に公開された。今作品は石原立也が監督を務める。2017年6月に新作映画の制作決定が発表されたので、発表から約2年で公開となった。

TVアニメ版で主人公である黄前久美子の1年生時代が描かれたが、誓いのフィナーレでは2年生になった久美子が描かれる。

大まかな物語の構成

前作では田中あすかと黄前久美子という「先輩と久美子」の関係であったが、今作では「後輩と久美子」という構成で物語は進行していく。

後輩に手を焼きながらも「全国大会金賞」という目標に向かって邁進する部員たち。

物語の構成的に問題を起こすのは久美子ではありません。基本的に別の人が問題を起こします。

前作で問題を起こし物語に起伏を与えてくれていたのは「田中あすか」「鎧塚みぞれ」「中世古香織」などなどでした。久美子はそれらの人が起こす問題の対応者として動きます。

誓いのフィナーレでは「久石奏」「鈴木美玲」「塚本秀一」らが物語を動かします。

久石奏は「頑張ることとは何か」を示し、鈴木美玲は「上手い人と下手な人どちらに合わせるか」という問題、塚本秀一は学業と恋愛という「青春」について問題提起していて、それらについて久美子なりの解答をするのが誓いのフィナーレの構成になっています。

良かった点

「リズと青い鳥」の演奏シーンと、希美とみぞれの結末についてちょっと考察

希美とみぞれについてはリズと青い鳥を見返したくなる気がします

関西大会の「リズと青い鳥」の演奏シーンは圧巻の出来でした。前作の「三日月の舞」が迫力で魅せる曲であれば、「リズと青い鳥」は感情に訴えかけるような曲です。

とても繊細な曲で、映画館で見たときは思わず息を飲むほどでした。

リズと青い鳥は親友との別れを詠んだ曲です。前作の「リズと青い鳥」では希美とみぞれという二人にフォーカスされていましたが、誓いのフィナーレでは久美子と麗奈にフォーカスされているように感じました。

曲のサビ(?)の部分で久美子と麗奈が順に映るカットがありました。大吉山で麗奈が久美子に、いつか二人に訪れる別れの時の話をするシーンがありました。高校を卒業して社会に飛び出ていけば、昔の友達に会う機会はどんどん減っていきます。ずっと友達と過ごすことはできません。

久美子と麗奈もいつか別れる時がくるでしょう。お互いのキモチが希美とみぞれの旋律によって表現されていて、とても感動しました。もし希美とみぞれが劇中で何かしら話をしていたらこうはならなかったと思います。もし希美とみぞれが会話するシーンを挟んでしまうと、この曲は久美子と麗奈の曲ではなくなってしまう。希美とみぞれを完全に黙らせるで顕在的には久美子と麗奈に意識を向けさせることを成功しているように思います。

では「リズと青い鳥」で描かれた希美とみぞれの関係性はどうなったのでしょうか。

それについてはまったくと言っていいほど描かれていなかったように思います。

しかし思い出してみると「リズと青い鳥」では後半みぞれが覚醒し、希美を置きざりにする圧巻の演奏をします。希美は途中で演奏を止め、みぞれの演奏に応えることができませんでした。

では誓いのフィナーレではどんな演奏をしていたでしょうか。しっかりとみぞれの演奏に寄り添いついていくのぞみの音がそこにはあったと思います。

直接的には語られないですが、「リズと青い鳥」のラストでみぞれに「ちょっと待っていてほしい・・・」と言った、のぞみの答えがしっかりと描かれていたと思います。

希美とみぞれの顔が映るカットを見るとどこか憑き物が落ちたように感じました。

二人の関係がどうなったかは演奏されたリズと青い鳥を聞いた観客に委ねられたという感じだと思います。

個性豊かな新1年生達

前作で、強烈な個性を発揮した田中あすかはもういません。高坂麗奈とコンクールのソロを争った中世古香織はもういません。部長として部を牽引した小笠原晴香はもういません。

ちなみにこの3年生ズですが、大会前にちょろっと顔を出します。相変わらずな感じであすかを中心に行動しているようです。大学に入ると高校の友達と疎遠になる人も多いですが、この3人は仲良くやっているようで少し嬉しかったです。

TVアニメシリーズでおなじみの3人組

そんな濃いキャラたちがいなくなった後だったので、だいぶハードルが高まっているなかですが、新キャラである新入生達はしっかりと存在感を出してきました。頭がいいばかりにちょっぴりめんどくさい久石奏。父親に対して特別な意識を持つ月永求。優秀がために人との付き合い方に戸惑う鈴木美玲。美玲と仲良くなりたいが空回りする鈴木さつき。

TVシリーズでは先輩方が持つ悩みに対して傍観をすることが多かった久美子でしたが、後輩の話となるとまた久美子の対応の仕方が変わるのが面白いです。

TVアンメ響けユーフォニアムの主人公が黄前久美子なら、裏の主人公は田中あすか

個性豊かな新入生の中でも個人的には久石奏が一番好きになりました。

キャラが立ちすぎている久石奏


映画の新キャラの中では久石奏が一番ストーリーに食い込んできます。

一見常識人に見えますがまったくそんなことはありませんでしたw。

一癖も二癖もあるキャラがたくさんいるユーフォニアムの世界ですが、奏はその中でも群を抜いて歪んでいます。ゆがみ方で言えば田中あすかに匹敵するくらいだと私は思いました。

常に本心を隠しながらも相手の腹の中は探り続けて弱みを握る嫌なヤツですね。近くにいたらあんまり近づきたくないタイプです。作中でも久美子を試すような言動を繰り返します。

奏はとても頭がいいんでしょう。頭が良すぎるがためにそうなってしまう人は現実にも結構いますね。

奏は先輩の代わりにコンクールのメンバーとして出場し、成果を残せず罵詈雑言を受けた過去をもっていました。そういえば久美子もそういった経験をしていますね。

情報収集能力も高いので、人よりも一歩先に思考が回るタイプで、その過去を繰り返したくないと思っているため先輩を立てるような言動を最初しています。

でもこれってTVシリーズの久美子も同じことをやってるんですよね。

おそらく久美子と奏は本質的にとても似ていると思います。

久美子が奏に苦手意識を最初持っていたように描写されていましたが、これは「同族嫌悪」だったのかなと私は思いました。

テレビのアニメを見直してみたら先輩目線から見たら久美子はだいぶめんどくさいです。結構ズケズケと先輩達のことを探ったり、試したりしてますしね。

あくまで誓いのフィナーレは久美子の物語ですが、奏が主人公になってもおかしくないくらいいいキャラクターしていたと思います。

モラトリアムと責任感との間で揺れ動く緻密な心情の描写

雨の中での奏と久美子のシーン

奏と久美子の会話
奏が本心を見せる今作の象徴的なシーン

やはり奏が久美子に追いかけられ本音をぶつけるシーンが印象的でした。とても良かったです。

ずっと本心を隠し続けていた奏が徐々に本心が露わになるのは、奏の人間らしさが出ていて映画でもいい流れができたシーンだったと思います。

「頑張ることの意味とは」「頑張った先に何があるのか」。その疑問を久美子にぶつけます。テーマ自体はTV版でやったことに近いですが、改めて困った後輩である奏がそれを言うことに意味があるように感じます。

あぁ青春だなぁと思ってものすごく感動しながら見ていました。複雑な心情が声からも伝わってきて声優さんは凄いなと思います。声優は雨宮天さんという方のようです。

雨で濡れた制服や髪の描写が生々しい

久美子が後輩を指導しているシーン

ちょっとニッチなシーンですが、久美子が新1年生の指導係として奮闘してるのが良かったです。

なんとなく後輩の指導はしなさそうと思ってたので新鮮でした。

面白かったのが普段の演技とまったく話し方が違ったところです。TVアニメ響けユーフォニアムでも思っていましたが久美子はクラスメイトと家族だと話し方が全く違う演技をするのが特徴的です。

そのどちらにも当てはまらない話し方で、本当に不器用な性格を表現するのが上手いなぁと思ってしまいます。

残念だった点

少し駆け足ぎみな展開だった

当たり前ですが、2クールかけて1年を描いたTVシリーズと比べて内容がかなり駆け足でした。100分の映画ですが、これでもかという内容が濃縮されています。凄く上手くまとめられていました

上手くまとめられてしまっているので映画としてものすごく面白かったです。

ただどうしてももっと他のキャラクター達についても触れてほしかったです。

もっと時間をかけて掘り下げてほしいと思えるくらいいいものでした。

例えば誓いのフィナーレでは奏はほとんど久美子としか話しません。

でもTVシリーズではもっと色々な人の掛け合いが見れました。あすかと小笠原先輩の何気ない会話。久美子と滝先生が車で話すシーン。デカリボン先輩と夏木の掛け合い。

尺の都合と言われればそれまでですが、もっと奏と他の部員との会話が見てみたかったです。

例えば奏と麗奈の会話とか、奏とあすか先輩の会話とかがそれです。

想像するだけでワクワクします。どんな会話をするのだろうと考えてしまいますね。

「リズと青い鳥」の演奏を聞いてなぜ全国に行けなかったのかわからなかった

北宇治高校は全国大会に行くことが出来ませんでした。

全国大会に行ける高校が発表された時、思わず力が抜けてしまいました。

デカリボン先輩がトイレで泣き崩れていたシーンを見てこちらも、もらい泣きしてしまいそうでした。

実際のコンクールでも見られると思います。

まぁ観客の贔屓になってしまいますが、リズと青い鳥の演奏は素晴らしかったです。

そのためなぜあれほどのレベルの演奏をして全国に行けなかったのか少し納得できませんでした。

ただそれについて真剣に怒っているわけではありません。

3年生になった久美子を描きたかったらここで全国大会に行かせないほうがやりやすいと思います。

ただ観客にそう思わせるほど「リズと青い鳥」の演奏は素晴らしかったです。

これで響けユーフォニアムのアニメシリーズが終わってしまいそう

これは誓いのフィナーレの内容ではありませんが、これで響けユーフォニアムシリーズが終わってしまいそうな気がしています。

まぁなんと言ってもサブタイトルに「フィナーレ」とついてしまっていますからね。

これで予定されている響けユーフォニアムのアニメシリーズはすべて出揃いました。

現在誓いのフィナーレの続編となる原作小説が進行しています。

もしも今後アニメをやるとしたら久美子が部長になった第3章がアニメ化されるでしょうか。

ただかれこれ響けユーフォニアムも初TVシリーズ放送から4年経ちました。

どうしても息の長い続編物となるとハードルは高くなるし、新参は入りにくい感じになりますね。実際誓いのフィナーレも1期、2期を見ていないとついていくのは難しい内容です。

ただの一ファンですが、できることならTVアニメ3期、または続編の劇場版を見たいと思っています。

誓いのフィナーレの興行収入がどうなるのかはわかりませんが、本当にフィナーレになってしまわないことを祈るばかりです。

TVシリーズで「誓いのフィナーレ」がじっくり見たい。それくらい面白かった。

率直な感想としてはものすごく面白かったです。

思春期特有の少しギスギスした感じが見ててドキドキするし、キャラクター達の成長が見ていて気持ちがいいものでした。

ただ映画を観終わって最初に思ったことは「これをTVシリーズで見たかった・・・」というネガティブなものでした。それくらい見るべきものが詰めに詰め込まれていたような映画です。

是非「響けユーフォニアム3」としてTVアニメ版でリメイクしてほしいなぁと願っています・・・。結構TVアニメ版で見たい人多いのではないでしょうか。

奏も求も、もっと上級生となった久美子も麗奈ももっと見ていたいです。そして夢の全国制覇・・・。

亡くなった滝先生の奥さんの願いとともに、大団円を迎えられることを祈っています。

シーズン3是非お願いします!!

黒沢ともよ (出演), 石原立也 (監督)吹奏楽部での活動を通して見つけていくかけがえのないものたち。これは、本気でぶつかる少女たちの青春の物語。
この想い、響け!!吹奏楽部での活動を通して見つけていくかけがえのないものたち。これは、本気でぶつかる少女たちの青春の物語。