劇場版シティーハンター新宿プライベート・アイズ感想・ネタバレありレビュー

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2019年2月8日公開。日本のアニメーション映画。アニメーション制作はサンライズ。配給はアニプレックス。総監督にこだま兼嗣。脚本は加藤陽一。そして原作は北条司。

始末屋(スイーパー)として裏社会に君臨する伝説のシティーハンター、冴羽 獠。 獠の相棒の槇村香。現代の新宿を舞台に依頼人 「進藤亜衣」の命を守るというミッションを請け負った獠。進藤亜衣を使って大量殺戮兵器メビウスの起動を企む御国真司。 亜衣が自分の過去と向き合い、シティハンター達の人間味溢れる、愛を超えた先にある関係に気づいていく物語。

劇場版シティハンター 新宿プライベート・アイズ

※あらすじ、評価にはネタバレを含みます。

あらすじ

待たせたな。俺を呼んだのは君だろ?

始まりはXYZ。

進藤亜衣の父が事故で死亡し、亜衣自身も自らを狙われていることを自覚していた。

警察に自身の保護願いを出すも、相手にしてもらえない。

すがるような思いで、駅構内にある掲示板アプリに「XYZ」と書き込んだ亜衣。

しかし待っても誰も現れない。くだらない噂話かと意気消沈し掲示板をあとにする。

路地裏にさしかかったころ、亜衣の眼の前に悪漢が姿を現す。

悪漢達が亜衣に襲いかかる。しかしそこに颯爽と現れたのが伝説のシティハンター、
冴羽 獠だった。

「俺を呼んだのは君だろ?」

獠と香は新宿の悪を打つ、裏社会における伝説的な人物。

亜衣がXYZと掲示板に書き込んだことにより、彼女の護衛を引き受けるのだった。

亜衣はモデルをやっていて、コンタクトのCMに出るほどの売れっ子であった。

獠と香は亜衣の職場を訪れる。

そこへIT総合企業「ドミナテック」のCEO、御国真司も来ていた。

イメージガールの視察に来ていた御国だったが、槇村香を見て目の色を変える。

香も御国を見ると「ひょろっち」と呼んだ。二人は幼馴染だった。

幼い頃、いじめられていた時に香に助けられた過去を持っていた。

香と再会したことにより急速に関係を深めていく二人。

亜衣は獠に、香が御国に取られてしまうかもということを伝えるが、当の本人はそんなことどこも心配していない。むしろ撮影スタジオの更衣室を盗み見ようとしているくらいだった・・・。

亜衣は獠の行動の意図がわからなかった。

御国は香に食事の誘いをしつつ、仕事のパートナーを努めてくられないか持ちかける。

香はそれを拒否し、スイーパーの相棒としての仕事を続けることを御国に伝える。

死んだ兄貴から引き継いだ仕事をやめるわけにはいかなかったからだ。

すれ違っていたと思われていた獠と香だったが、香は獠を信じていた。

一方、喫茶店キャッツアイで働く海坊主と美樹は傭兵が新宿に集まっているという情報をキャッチする。

御国真司が冴羽獠と進藤亜衣を仕留めるために日本へ傭兵を集めていたのだった。

実際に襲われてしまう獠と亜衣。

新宿が戦場になろうとしていた。

喫茶キャッツアイも襲撃され、亜衣は御国真司のもとへ行ってしまう。

父親の遺言が御国のものとにあるとされたからだ。

しかしそれは御国真司の企みだった。

亜衣の父親が開発した大量殺戮兵器の起動のキーは亜衣自身が握っていた。

進藤亜衣の網膜パターンがメビウス起動の鍵だったのだ。

死んだ父親のスマホの網膜認証を通過した御国真司はメビウスの起動に成功する。

起動したメビウスを使って御国は冴羽獠を殺す算段を立てた。

メビウスは人の脳波で兵器を操作できるというもの。

強襲用ドローンと自立型4足歩行ロボットが獠と亜衣を襲う。

一方香はキャッツアイの協力で敵本拠地へ侵入。

幼馴染として、御国を止めようとするのだった。

しかし香は逆に拘束されてしまう。香の眼の前で冴羽獠を殺したい御国だったが、冴羽獠の神業的射撃でドローンは全て撃ち落とされた。

私情をからめる御国に対して出資者のヴィンス・イングラードは今後自分が指揮を取ることを宣言。御国からメビウスを奪おうとする。

反対する御国。その御国を見かねて香を人質にするヴィンス。

交錯する二人の悪人だったが、結果は御国がヴィンスを撃ち殺すという結末になる。

「ウォーフェア・メーカー」の名を受け継ぎ、新たな後継者となったことを高らかに宣言する御国。それに反対の意を示すものはいなかった。

しかしそんなところに冴羽獠が到着する。御国は香を連れて逃亡するが、獠はメビウスを狙撃。

落としたメビウスを拾う御国だったが、香にこんなことをやめるよう諭される。

だが闇に落ちた御国はそう言ってくれる香を「汚点」と切り捨てた。

最後の説得に失敗した香は、全てを獠に委ね、獠は引き金を引く。

メビウスは破壊され、亜衣は父親との確執も解消した。

後始末は冴子がやり、喫茶キャッツアイは無事復旧。

平穏な新宿がまた戻ってきた。シティハンターは新宿を守ることができたのだった。

進藤亜衣は医者になるべく大学に復学。

香へウェディングドレスの写真を手渡し、日常へ戻っていった。

ウェディングドレスの香の写真を見た獠は、「大切なものはいつも変わらない」と言い、また裏社会へ姿を消したのだった。

感想

シティハンター復活について

約20年ぶりの復活となったシティハンター。

一ファンとしてはとても嬉しい反面、現代という時代性に合うのかどうか心配でした。

今回のシティハンターに限らず、リバイバル物は新規ファン向けになるのか、古参ファン向けになるのかで評価がわかれるような気がします。

そういう観点でいくと、この新宿プライベート・アイズは古参ファン向けに作られたものです。

冴羽獠のもっこり発言や香の100トンハンマー、ましてやキャラの後ろにトンボが飛ぶなどなど。使われている演出は1990年代そのものです。

使用されている楽曲も昔のTVシリーズで使われていたものをそのまま使っています。

なによりも主題歌が「Get Wild」というファンサービス付き。

この判断を下すのは簡単なものではなかったと思います。

どうしてもマーケティングの目線でいくと新規獲得のほうに目が向きがちです。

それでもここまで当時を再現しようと尽力できたのは、こだま監督という、TVシリーズ当時のスタッフが頑張ったおかげではないでしょうか。

ストーリーについて

王道中の王道です。

美女の依頼人「進藤亜衣」を獠と香が守り、そして大団円を迎えるというもの。

テレビシリーズ1本でありがちなストーリーを2時間にまとめた印象です。

捻りや大逆転は特にありません。

正直にいうと、最初に見たときは古臭いノリが満載でちょっとついて行けるか心配になりました。その分、香の「時代性考えろ!」のセリフには笑ってしまいます。

でもこのセリフのおかげで、「製作者側がノリが古いのをわかってて作っている」ということが伝わってきてよかったです。そのセリフで救われた感があります。

獠のスケベな言動が続く前半パート。エローンって・・・。しかしこの頃になると最初は若干引いていた観客が獠のノリに慣れてくる感じがします。

進藤亜衣というキャラがストレートなもので良かったです。

今どきのストーリーではキャラが持つ悩みの数が多すぎる気がします。

進藤亜衣が持つ悩みは父親との確執で、結論からいくとそれが解消されるキレイなストーリーにまとまっていると思います。

後半は本性を表した御国真司との決戦ですが、なんと言ってもトラックのシーンがかっこよかったです。ドローンに追われるシーンですね。

特に冴羽獠のリロードがかっこいい。ショットガンで次々とドローンを落としていきます。

その時に鳴る音楽も昔のテレビシリーズの音楽が使われていて感無量。

ちなみに獠がおこなっていた銃をくるっと回してリロードするやりかたは「スピンコック」というそうです。ターミネーター2でシュワちゃんがやってましたね。

それからドローンが銃を弾くようになってから、跳弾でドローンを倒すシーン。

シティハンターの人間離れしたガンテクニックがわかるシーンでした。

御国真司について

私この映画で最も魅力的に感じたキャラクターは御国真司です。

シティハンターが輝くためには悪役が輝いてなくてはいけません。

最近の悪役はよく考えられているんですが、ちょっと凝りすぎな印象があります。

考え方によっては正義みたいな設定の悪役が多いです。

対して御国真司は純粋な悪です。ウォーフェアという戦争経済を思いつき、無差別殺人を計画し、人の死を利用し、幼馴染すら裏切ってしまい、援助者も殺すという、なかなかな悪役です。

一昔前のアニメではありがちな純粋な悪という設定でしたが、一回りして新鮮に見えてきた感があります。

あと私がこの映画で一番の見どころだと思ったのは「CITY HUNTER~愛よ消えないで」が流れるシーンです。

TVシリーズファンとしてはどこで流れるのかな~と期待していたところではありますが、最高のシーンで流れてくれました。

もう本当に御国真司が助ける価値のない存在となってしまったと同時に流れる、観客にカタルシスを与える物語のピークです。

もうたまりませんね。このカタルシスを生み出してくれたのは間違いなく御国真司だと思います。

エンディングについて

映画の終わり方は、亜衣が父親との確執を終え医師になる決心をし、獠と香は恋人以上の絆で繋がっているということを再確認して終わりました。

そして冴子によって設置された新しい掲示板に「XYZ」と書き込まれて終わるというものでした。

完成披露で神谷明さんが「ルパン三世もの」のようにたまに帰ってくる存在になってくれたら嬉しいと言っていましたが、そういったものが作りやすい引きだったと思います。

続編は作り方によっては一作目の幸せな結末の感動が薄くなってしまうリスクがあるのでちょっと嫌なのですが、なにしろエンジェルハートという真の続編がある以上、そういった心配は不要なのかもしれません。

最後に注目するのがエンディングの「Get Wild」。

あぁシティハンターはやっぱり・・・これやなって!

GetWildが流れるのはなんとなく予想してたのですが、まさかTVシリーズの名シーンをリメイクしてくるとは思いませんでした。

特に槇村が死ぬシーンのリメイク!!

ほんの数秒ですが忘れられない強烈なインパクトがあったと思います。

まとめ

元気に動き回る冴羽獠やカッコいい冴羽獠。どちらも見ることができて本当に満足感の高い映画でした。

いつ見ても楽しめる、最高の映画だと思います。