【ネタバレ有り】FEエンゲージのシナリオ・ストーリーの何がひどいのか考える【小室菜美】

ゲーム,エンタメ

ファイアーエムブレムエンゲージが発売され、遅れながらも全クリをしましたが、あまりにもストーリーが稚拙であり、出来の悪い作品だったので何がひどいのかを言語化していこうと思います。

巷で言われている「エンゲージはシナリオがひどい」という意見ですが、シナリオという言葉にはおそらく脚本と分けて考えたほうがいい部分もあると感じました。

あと比較対象としては風花雪月を使っていきます。そちらの方が出来がいいので。

また、シナリオの欠点を書いていく際にどうしてもネタバレを含む形になりますので、まだクリアしていない人はお気をつけください。

FEエンゲージの脚本の問題点

ファイアエムブレムエンゲージの脚本の何がひどいのかを列挙、説明していきます。

語彙が少ない、ワンパターンな会話劇

まずゲームを進めて感じたことは圧倒的に語彙が少ないテキストであること。

語彙力が少ないため、同じことを言い換えて繰り返すだけになっています。

パッと思い出すだけでも以下のような文章がよく使われていたと思います。

  • 画策しているようです
  • お初にお目にかかります
  • 〜〜と言いたいところなんだけど
  • なによりです

話の広げ方がワンパターンすぎて、どこかで聞いたような会話が終始続きます。

地の文が多すぎてウザい

エンゲージの脚本には説明的文章が多すぎます。

脚本家からすれば、場面を説明してしまう方が手っ取り早くていいでしょうが、プレイヤーからしたら押し付けがましく感じられて、ウザい文章になります。

これはWeb小説にありがちな特徴でおそらく小室菜美さんもその手のものが好きなんだと思いますが、1人称のWeb小説とは違い、3人称のゲームでそれをやられるとプレイヤーから想像力を奪ってしまい、結果的に退屈な時間が流れることになります

よくも我が国を・・・ここで果てるがいい。とかでいい、説明しすぎている
どちらも「力になる」と言う意味を持つので分けて書く必要なし

言わせたいセリフが先行して作られていて、プレイヤーが引いてしまう

小室菜美というシナリオライターは、おそらく刹那的なシーンやセリフに興奮を覚えるタイプのライターだと思われます。

細身のイケメンが急に土下座したら面白いだろうなーとか。

ノリがきつい、高校生が授業中に思い描いていることを映像化した時の寒さを感じる

ゴスロリの王女が戦場で挨拶したら面白いだろうなーとか。

イケメン(?)が戦場でウェーイ!って言ってたら面白そうだなとか。

とにかくライターの趣味嗜好をイメージボードにされているので物語の世界観や前後の文脈にかかわらずネタが突っ込まれていて非常に不快になるし、心が引いてしまう。

政治や戦争というものに対しての考えが甘すぎる、現実感がない

ファイアーエムブレムエンゲージは四つの王国と一つの聖地からなるエレオス大陸が舞台となるのだが、この世界に対して「なぜ」そうなっているのかの説明がなされません。

特にひどいと思ったのが4国の関係性の説明です。

例えばアルフレッドによると、フィレネ王国は100年の間戦争をしていないとのことですが、これに対して主人公は「統治の賜物」と言っています。

え?

よく考えてみてほしいのですが、戦争の有無に統治は関係ありません。

戦争は自国内の話ではなく、隣国との関係性により発生します。いくら国内が平和でも攻め込まれれば、戦う必要があるのです。

しかも説明ではフィレネ王国は豊穣の国であり、敵国としては攻め入る理由が十二分にあります。

例えば現実世界でも、モンゴル帝国が食糧を求めて多くの戦いを起こしていました。

ソルム王国とブロディア王国の土地を見ると、お世辞にも農業が盛んに行なえる地理では無いことは一目でわかります。

そのため、本来であればフィレネ王国は今すぐ攻め込まれてもおかしくない地理関係にあると言えます。

そんな状況にあるにもかかわらず、100年もの間攻め込まれてなかった理由を本来ここで説明しなければなりません。

ですが、「統治」を理由とするあたり、脚本家の学の無さが露呈している気がします。

不戦協定があるじゃないか!と思われる人もいるかもしれませんが、結ばれたのはここ数10年の話です。

アルフレッドが「母の代」に不戦が契られたといっているので間違い無いでしょう。

なので協定がない時期にも戦争が起きなかったということだと思うのですが、こんなに作物が豊な土地で、そんなことがあり得るでしょうか?

さらに意味不明なのがブロディア王国です。なんと領土拡大のために雪国のイルシオン王国に攻め入っているということです。

さっき主人公が統治の賜物って言ったばかりなのに、そもそも統治できてないじゃん、という。

戦争は国民を疲弊させます。

そのため戦争に勝利した暁には、食糧であったり職であったり国民にメリットがなければいけません。

ですが、ブロディアは山だらけで寒冷地の土地を手に入れて何がしたいのでしょうか。

後の説明ではイルシオン王国が侵攻を企てているから防御してるだけ、みたいな会話も出てきますしもうわけがわかりません。

風花雪月でも戦争に至るまでの過程はとても細かく詳細に描かれていました。こういう各国の状況は分割してでも詳細に描かなくてはリアリティが出ません。

そしてそのリアリティがゲームをもっと面白くするのだと確信しています。

脚本家は戦争を土地の奪い合いだとでも認識しているのでしょうか。そうであるならあまりにも稚拙な考えです。

何やってんのこいつ?何言ってんのこいつ?というシーンが多すぎる

創作なのでご都合主義や辻褄合わせは多少仕方のないところではありますが、プレイヤーが納得できるような説明があれば問題ありません。

しかし、このゲームは目の前で起きていることに対して納得できないことが多すぎます。

例えば指輪を奪われるシーンですが、竜の時水晶の能力を使ったような文章が書かれているのですが、具体的にどんな能力なのか説明がありません。

ポルナレフ状態

そもそもプレイヤー視点からいくと竜の時水晶は時間を巻き戻す能力を持ったアイテムであるという認識です。

なのにどうしてそのアイテムで指輪が奪われるのでしょうか。これが説明されないので納得がいきません。

時間を止める能力もあるのでしょうか?であればそれはプレイヤーにどこかで説明されるべきです。

このシーンに限らず頭に「?」がついてしまうようなことが多々起きます。

そして説明がないので、心にモヤモヤがつきまとうようになってしまいます。

既知の情報を繰り返し言わせていて、水増し感が強い

例えばブロディアに入り、スタルークとディアマンドに初めて出会うシーンがあるのですが、そこでこの2キャラクターは同じことを発言します。

すでにイヴから書簡による情報伝達があったことは、最初のスタルークとの会話でプレイヤーは知っているのでディアマンドにわざわざそのことを言わせる必要はありません。

もちろんディアマンドからすると、スタルークと主人公の間にそのような会話があったことは知らないわけです。

なので、こういう枕詞を言うことがリアルなのかもしれませんが、プレイヤーからすれば既知の情報ですし、どうも水増し感の方が強くなってしまいます。

他にも気になった点はストーリーの後半、やたらと「四狗は家族」「四狗は家族」と敵に言わせていることです。

流石に繰り返しすぎ

流石にこれは言わせすぎですし、物語の中の伏線になるわけでもないですし、そもそも四狗自体元々そんなに仲が良いわけでもなかったですし、これほど推すような表現でもなかったのではと思います。

主人公の周りにイエスマンしかいない

例えば今作では主人公が無駄に褒められ、慰められ、甘く接せられるシーンが非常に多いのですが、なぜ神竜が崇められているのか、なぜこのキャラクターは神竜を信仰しているのか、何も説明がないです。

竜なんだから信仰されて当然だろ!みたいな感じの脚本なんですが、おそらく脚本家の頭がお花畑か、それを表現するための実力が不足しているんだと思います。

基本的に主人公の考え=正義なので今後のことを議論のようなパートはありませんし、選択肢の提示もないため、どういう行動原理でキャラクターが動いているのかがわからず、感情移入できなくなっていきます。

FEエンゲージのシナリオの問題点

ここからは脚本ではなく、物語の構成について気になった部分を書き出していきます。

と言っても気にならない部分がないため一部だけの紹介にとどめます。

ルミエルが死ぬタイミングが早すぎて全く感情移入できない

割と多くの人が言っているように思いますがルミエルが死ぬタイミングが早すぎます。

全く感情移入する時間が与えられないまま、事態が展開するので置いてけぼり感がすごいです。

まぁ物語の都合上、ルミエルが殺されないと主人公が戦う理由が無いですが、方法はいくらでもあるはずなので、これはシナリオの問題だと思います。

キャラクターの利害関係が描かれないため感情移入しにくい

主人公は神龍という立場のため、基本的に周りはイエスマンだらけです。

なので各キャラクターがなぜ戦うのか、という部分がほとんど描かれていません。

一部のキャラを除いて、主人公が戦うと言っているから戦うという人ばかりです。

現実問題、そんな都合のいい人ばかりではありません。戦争はどこまでいっても殺し合いなんですから。

自分の命をかけるのだから、キャラクターにはそれなりに戦う理由を描いて欲しいものです。

本来であれば各国の情勢や宗教観、思想など深いところまで設定を考え抜かねばならないのですが、開発陣がそれを放棄したのだと思います。

過去作を本当にプレイして書かれているのか疑問が残る紋章士外伝パート

ファイアーエムブレムエンゲージの目玉はなんと言っても過去作の主人公たちが一堂に会するところにあると思うのですが、その強みを全く活かせていません。

外伝的なミッションで過去作のステージを遊ぶことができるのですが、そこでの会話も浅い浅い会話を少しするだけです。

これは小室菜美が過去作をプレイしておらず、設定資料集を見て勉強した気になっているのが問題だと思われます。

https://trend-tracer.com/wp-admin/post.php?post=9629&action=edit より引用

私は毎晩「ファイアーエムブレム大全」を読んで、過去のシリーズを勉強していたんですよ(笑)

メイキングオブファイアーエムブレムより

ひどいのはシナリオと脚本どっちなのか

「シナリオはそんなに酷くない、問題なのは魅せ方(脚本)である」という意見も散見されましたが、個人的な結論としては「どっちもひどい」です。

「風花雪月」と比較されるのは当然だし、比較しないほうがおかしい

今回他の人のツイートやエンゲージの批評・レビューを読んでいてたまに見かける意見としては、「風花雪月と比較しないほうがいい」「風花雪月の方が異端」というものが多かったです。

個人的には、これはお門違いもいいところだと思います。

2作とも位置付けとしては、ファイアーエムブレムの正当なシリーズ作である以上比較されて然るべきですし、何よりも風花雪月は過去シリーズの良さを受け継ぎつつ新しいシミュレーションRPGの形を提示した意欲作でした。

風花雪月が評価も低く、売り上げも伸びなかったなら話は別ですが、現実は新規層も獲得し、古参のファンも満足させる神ゲーとして認識さレています。

良いところを受け継いでこそのシリーズ作なのに、風花雪月の評価されている部分を全く受け継がず、寧ろ巻き戻ってしまったように感じる部分が多いです。

風花雪月が作り出したいい流れをエンゲージの中途半端な出来によって断ち切られた

シミュレーションRPGは良くも悪くも人を選びます。

覚醒やifで所謂キャラ萌え層の新規獲得を達成しましたが古参のファンには不評でした。

しかし、風花雪月では新規と古参のどちらのファンも納得させるものとなり、ファイアーエムブレムの普及に大きく貢献したと思います。

この風花雪月が作り出したいい流れを、このファイアーエムブレムエンゲージで断ち切られてしまったような気持ちになります。

それほどまでにシナリオ・脚本の出来が足を引っ張っています。

開発チーム内から脚本のクオリティに対して声は上がらなかったのか?

ファイアーエムブレムエンゲージの脚本については素人目から見ても、きついものがあるのは説明した通りです。

全て小室菜美さんのせいにすることは簡単ですが、開発チーム内からこのテキストのクオリティに対して声が上がらなかったのか?と思ってしまいます。

もしかしたら、コロナにより在宅ワークによって縦割り組織となり、別の部署の仕事に対して声を出しづらくなったのかもしれません。

次回作も小室菜美が関わるようなら購入は控えようと思う

ファイアーエムブレムエンゲージは戦闘パートが本当に面白いゲームでした。

しかしシナリオ・脚本の出来により最悪のゲームとなっています。

歴史あるゲームシリーズなのでシステム面は洗練されていっているのに、本当に勿体無いと思いました。

もしも次回作も小室菜美が関わるようなら、購入は控えたいと思います。

それほどまでに最悪の仕事をしたライターだと思います。

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Posted by sensiki